リモートデスクトップは、とても身近なものです。
パソコンを2台用意し、一台のパソコンから、もう一台のパソコンを操作する。
基本システムは、これだけです。
このシステムが、インターネット回線の高速化や、モバイルネットワークの発展によって、革命的に姿を変えようとしています。
テレワークを実現したり、パソコンの可用性を高めるのに大きな威力を発揮します。
リモートデスクトップのアプリケーションはWindows OSに初期状態で付属しています。
しかし、実際に、業務で使用されているところを、あまり見かけません。
リモートデスクトップのメリットが、あまり知られていないことが理由の1つです。
これから、リモートデスクトップ導入のメリットについて、ご紹介します。
windowsのリモートデスクトップ
一般的にリモートデスクトップというと、Windowsでのリモートデスクトップを意味します。
リモートデスクトップの基本は、以下のようなものです。
パソコンを2台用意します。
それぞれ[パソコンA]、[パソコンB]とします。
LANケーブルを介して、[パソコンA]から、[パソコンB]の画面を操作することができる。
[パソコンA]から、[パソコンB]の画面を見ながら、[パソコンB]のキーボードとマウスを操作することが可能。
これが基本です。
つまり、「ネットワーク」を介して、一つの「パソコン」から、もう一つの「パソコン」を使う。
ここに書いた「ネットワーク」と「パソコン」の種類を変えることで、用途に合わせて、驚くようなパフォーマンスを発揮する。
それが、「リモートデスクトップ」です。
始まりはサーバー管理用のアプリケーションだった
Windowsはグラフィック画面(GUI)で使うソフトウエアです。
UNIXなどのコンソール画面(CUI)からコンピューターを操作するのと対象的です。
CUIではtelnetやsshでリモートのサーバーに接続して、メンテナンスしていました。
Windowsはグラフィック(GUI)がベースなので、sshやtelnetの代わりに、リモートデスクトップで、離れた場所にあるサーバーの画面を見ながら操作する形になったのです。
社内業務で使うようになった
リモートデスクトップはリモートで別の場所にあるサーバーを管理するためのものだったのですが、リモートデスクトップは通常のパソコン画面を見るのと同じで、グラフィック表示です。
リモートデスクトップでは、離れた場所にあるコンピューター画面を、手元のパソコンのデスクトップに映し出します。
サーバーのメンテナンスではなく、そこでオフィスソフトなどを使って、通常のデスクトップ画面で行う業務を行うこともできるのです。
通常業務を行うために、リモートデスクトップは画面転送をより効率的に行うように、ブラッシュアップされました。
当時、バックオフィス製品として販売されていました。
アクセス先の「パソコン」の代わりに、サーバーを使い、一台のサーバー上で、複数の画面を生成して、複数のユーザーにシェアしました。
アクセス元の「パソコン」はシンクライアントなどの比較的安価なものをつかいました。
総務、経理などの社内業務(バックオフィス業務)に使用して、コストメリットをだしました。
インターネットがそれほど普及しておらず、通信速度や品質が低かった当時、リモートデスクトップの使用は、まだ社内に限定されていました。
社外からアクセスできるようになった
インターネット回線の帯域拡大と品質向上、常時接続回線の低価格化によって、
インターネットを介して、遠方の事業所や社員の自宅からVPNを使って、社内のリモートデスクトップサーバーに接続することが可能になりました。
社内LANに縛られていたリモートデスクトップの使いみちが、大きく広がります。
会社の事務所からデータを持ち出すことなく、自宅から、いつものパソコンのデスクトップにアクセスして、資料を閲覧し、メールを確認することができる。
ワードやエクセルを使って、資料を作ることができるようになりました。
モバイルでリモートデスクトップを使うことができるようになった
モバイル回線のスピードアップと低価格化によって、屋外からの接続が可能になりました。
モバイルパソコン(ノートパソコン)とスマートフォンやWifiルーターを使うことで、訪問先の顧客事務所や出張先から、リモートで会社のパソコンを操作することが可能になりました。
パソコンを持ち出せば、世界じゅうどこからでも、会社のパソコンで、いつもの業務ができるようになりました。
かつては働く場所を、会社の事務所に限定されていました。
リモートデスクトップを使うことで、働く場所の縛りから社員を開放し、通勤時間と通勤費を使わずに、好きな場所で仕事ができる、効率的な働き方を実現することができるようになったのです。
テレワークでリモートデスクトップを使う
このような特徴を持つリモートデスクトップが、テレワークに有効であることは、用意に想像できます。
テレワークでリモートデスクトップを使うメリットとデメリットを紹介します。
テレワークの危険性
テレワークを行うとき、社員にノートパソコンを支給すればいい。
ところがノートパソコンを持ち歩く場合は、そのノートパソコンに作業用ファイルを入れて持ち運ばなければならない。
ノートパソコンを紛失したり、盗難にあった場合には、それまで作業にかけたものがすべて無に帰してしまします。
また、情報漏えいにつながる場合もあるでしょう。
USBメモリなどを使うこともできますが、これも逸失の危険性があります。
あるいは社員のPCを使ってもらうBYOD (Bring your own device)という選択肢もあります。
この場合、個人のデータと会社のデータが混同されてしまう恐れがあります。
リモートデスクトップで実現される鉄壁のセキュリティー
リモートデスクトップを使うことで、一切のデータを社外に持ち出すことなく、安全な業務が、世界中どこからでもできます。
リモートデスクトップでサーバーから送られてくるのは、画像情報です。一切のデータや活字情報はクライアントに届きません。
もし、持ち歩いていたノートパソコンなどのデバイスを紛失しても、その中にデータファイルはありません。
リモートデスクトップの実現方法と構成
リモートデスクトップを使うために、どのような方法で遠方のパソコンのデスクトップを表示するのか、複数の方法が存在します。
接続方法によって、ネットワーク構成や手元のデバイスが変わります。
- クライアントの違いによる分類
- WindowsパソコンからWindowsパソコン(あるいはサーバー)に接続する
- シンクライアントからWindowsパソコン(あるいはサーバー)に接続する
- WebブラウザでWindowsパソコン(あるいはサーバー)に接続する
- クライアントとホスト間のネットワーク接続方法の違いによる分類
- リモートデスクトップ・ゲートウェイを使う
- VPNを使って接続する
- 直接ホストをインターネットに公開する
- ホストの構成形態による分類
- 普通のパソコンをホストとする
- 仮想マシンをホストとする(VDI)
- サーバーセッションをホストとする
これらを組み合わせて、使用状況にあったリモートデスクトップ環境を構築していきます。
リモートデスクトップのエコ
リモートデスクトップで使うサーバー(ホスト)には、ディスプレイは必要ありません。
リモートデスクトップのサーバーはディスプレイ画面をユーザーに送っているのではありません。
サーバー内部に仮想的な画面を作って、それをユーザーに見せています。
仮想的な画面は一つのサーバー内に、サーバー性能の範囲内で、無限に作ることができます。
これまで一人一台のパソコンを使っていたので、それぞれのパソコン毎に設置場所と電力消費がありました。
リモートデスクトップでは、一台のサーバーの設置スペースとサーバー1台分の消費電力でいいのです。
サーバーはディスプレイを必要としないので、どこにおいても構いません。
接続する側のクライアントは、シンクライアントのような、超少電力の専用デバイスでいいのです。
エコロジカルでエコノミーなのがリモートデスクトップのメリットです。
リモートデスクトップで社内と社外の垣根がなくなる
リモートデスクトップはテレワークでのみ使えるわけではありません。
なので、事務所内ではデスクトップパソコン。テレワークではリモートデスクトップという分けた使い方をする必要はありません。
社内でも社外と同じように、リモートデスクトップを使って仕事ができます。
事務所はあってもいいし、なくてもいい。
事務所で落ち着いて仕事をしたければ、いつも持ち歩いているモバイル・パソコンに大きなディスプレイと外付けのキーボード&マウスをつないで、
リモートデスクトップを使って、デスクトップ・パソコンのように使えばいい。
グラフィックや動画も、リソースの大きいサーバーを使うことができるので、非力なノートパソコンではできない処理もストレスなくできます。
リモートデスクトップ技術の進歩
帯域の限られたネットワークを経由して、画面情報を転送する技術は、少しずつ進歩してきました。
情報の圧縮技術や動画情報の転送技術、ハードウエアエンコーディングの技術などがそれです。
その一方で、5Gのような、ネットワークスピードの爆発的な向上が期待できます。
リモートデスクトップはネットワーク品質に大きく依存するシステムですが、技術進歩によって、ますます使い勝手が良くなっていくでしょう。
リモートデスクトップの課題
メリットの多いリモートデスクトップですが、実際に採用しているところを見ることは、あまり多くありません。
その理由は、デメリットというより、いくつかの課題が残されているからです。
複雑なネットワークとアクティブディレクトリ(AD)が必須
2つのパソコン間でリモートデスクトップを使う、サーバー管理のような使い方であれば、簡単です。
ところが、Windowsで、複数の管理を目的としないユーザーが使うリモートデスクトップ環境を構築するためには、アクティブディレクトリ(以下ADと示します)という認証システムが事前に構築されていなければなりません。
リモートデスクトップ用以外にADサーバーを建てなければなりません。
また、社外からセキュリティーを確保しながら、社内にアクセスするためには、リモートデスクトップ・ゲートウェイやVPN設備などの複雑なネットワークの構築が必要になります。
Windowsでリモートデスクトップ環境を構築するには、サーバー管理とは比べ物にならない、大きなシステムが必要になるのです。
リモートデスクトップは高価
Windowsサーバーやオフィスなど、マイクロソフト製品をエンタープライズ用途で使う場合、高額なライセンス料が必要です。
一般的に上記で上げた複雑なネットワークや認証システムの構築にも相当な費用がかかります。
リモートデスクトップを採用できるのは、超大手の企業や官公庁に限られているのは、そういう理由からでしょう。
安価にリモートデスクトップを導入する方法
それを打ち消してしまうほどの課題があれば、いくらメリットがあっても、採用に至りません。
リモートデスクトップ導入の敷居を下げるには、どうすればいいでしょうか。
オープンソース・ソフトウエアを使ってライセンス料を節約する
マイクロソフト製品ですべてを構築すると、ライセンス料で、リモートデスクトップ導入のメリットが消えてしまいます。
ご存知の方もおられると思いますが、オープンソース・ソフトウエアにはライセンス料がかかりません。
置き換えられる範囲で、マイクロソフト製品をオープンソースに置き換えることで、構築費用を節約することができます。
リモートデスクトップに限って、部分的にオープンソースを採用しても、大きなコストメリットを出すことは難しいかもしれません。
社内システム全体を見渡して、オープンソースの採用を検討することで、コストメリットの可能性が大きくなるでしょう。
もし、マイクロソフト製品を一切使わない決断ができるなら、ライセンス料をゼロにすることも可能です。
リモートデスクトップをセッションベースのサーバーで使うことで、リソースを効率的に使う
Windowsでリモートデスクトップサーバーを構築する場合、通常2つの方法があります。
- ユーザーごとに仮想マシンを割り当てる方法
- ユーザーごとにセッションを割り当てる方法
の2つです。
①は一人一台のパソコンを配布するのと同じで、物理パソコンが仮想マシンに変わっただけ。
なので、ユーザーごとに別のソフトウエアをインストールでき、設定もユーザー毎に行えます。
②は一台のパソコンを複数のユーザーでシェアするイメージです。
すべてのユーザーが同じ環境を共有します。
データや権限は別れますが、ほぼ同じ環境で、同じソフトウエアを使います。
所属する会社が別のユーザーが使うような場合は、①を選択することになりますが、
同じ社内のユーザーを対象にするなら、②のほうがサーバースペックやメンテナンスコストが抑えられます。
まとめ
リモートデスクトップはPC環境の可用性を高め、テレワークの安全性を堅牢なものにします。
リモートデスクトップを導入することで、働く場所の拘束から社員を開放することができます。
データを社外に出すことなく、世界中から社員を採用することも可能です。
会社にとっては通勤費をなくすことができ、社員は通勤地獄から開放されて、人生の有限な時間を効率的に使うことができる。
いいことずくめのリモートデスクトップですが、問題は高額であること。
社内システム全体を視野に、システムを構築することで、リモートデスクトップ環境をリーズナブルな価格に抑えることができます。